その瞳をわたしに向けて
「松田、お前何やったんだ?」
「はぁっ?」
声をかけられた方を見ると同期入社で海外事業部の堀内拓海(ほりうちたくみ)だった
「さっきここから出てった二人が、お前にビビってたぞ」
二人?ああ、さっきの清宮の話の奴等か………
「…………ただ火ぃ借りただけだ」
「眉間に皺寄ってるぞ、機嫌がわるいのか………?」
喫煙所まで入ってくるが、こいつは煙草を吸わない
「何の用だ、7階までわざわざ…………」
「いやねぇ~モテモテの松田君をどうしても今日の飲み会に呼んでくれって頼まれちゃったもんでね」
やっぱりそんな事か、と煙草の煙を吐き出しながら溜め息をつく
「パス、悪いが昨日も飲みに行ったから連チャンは無理だ。だいたいお前の飲み会は合コンだろ、そう優類いのには行かねぇって言ってるだろ」
そう言うとふぅんと目を細めてきた
「確かに間に合ってるみたいだな、女子達が騒いでたが、昨日と同じスーツ、ネクタイらしいなぁ、剛平君…………」
「煩い、たまたまだ」
「ほうっ……じゃあこれは?」
堀内がニヤニヤしながら松田の左目の頬を小突く
……こいつは本当に目敏い
微かに赤くなっている松田の左の頬
あいつ、思いっきり殴りやがった