その瞳をわたしに向けて


ある日、玄関を開けると同時にどこかに隠れていたその男に押し入られた

「?!」

急いで閉めようとしたが、力では敵わない………

身長も図体も大きい男に押し入られ、逃げようにも玄関からリビングへの廊下で捕まってしまった

そのまま押し倒され馬乗りにされると、その顔はゾッとするほど恍惚な表情を浮かべていた

「あいつの隣で笑ってたのを俺に向けてくれたらいいだけだろ。難しい事じゃないだろ、別れたんだから」


必死に抜け出そうともがきながら首を振る


「頭がいいだけのへらへらしたあいつと付き合うよりバスケのエースの方が見栄えがいいだろ、絶対幸せにするから美月」

「いやっ!」

そう言った途端平手打ちが飛んできた

「………っ」


怖い…………頬の痛さから身体の震えて、もがいていた手足の力が抜ける


「ほら、ちゃんと話し合えば分かるだろ」

見下げるその男がポケットからどこにでもある細目のカッターを取り出し笑って美月の顔の前に刃を向けた

「!!」

「ちゃんと言えよ、俺と付き合うって、一緒にいるって、美月は俺の彼女だろ」


恐怖で涙が溜まる瞳で、覆い被さる男の目を見直した

「……………た……」


「美月っ!!」


瑠璃ちゃんの声が聞こえて、バタバタと何人かの人が入って来て…………その後はなにも覚えていない

気が付いた時には目の前にいた瑠璃子の腕にある斬り付けられた傷と血だけが目に映った

「…………うぇっ……ううっ、るり……ちゃっ………ううっわぁぁぁぁぁん」




美月の殴られた頬や斬り付けられた瑠璃子の怪我で、傷害罪としてその男は捕まった


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