その瞳をわたしに向けて
「ふうんっ、でっその後は大丈夫なの?」
頬杖をついて美月の顔を覗き込んだ
「家まで入ったってことは、セキュリティの暗証番号とか鍵とか教えたかもしれないよねぇ……」
「……あ」
「記憶がなくて知らないうちに、携帯とかIDとか見られてるかもしるないでしょ」
それはまさに何年か前のわたしの失態……
「…………でも、たぶんその心配はないかな」
「言い切れる?もしかしたら既に今、部屋の前で待ち伏せしてるかもよ、昨日その前の話でしょ?」
「……………」
俯いたまま、暫く考え込む美月。コーヒーを一口飲んで瑠璃子の方に顔を上げる
「カン………?」
美月のその答えに「ぷっ……」と少し肩を揺らしながら笑う
「酔ったエロ美月にしっかり誘惑されたのに、本当にシテないなんて、分からないじゃない。美月には記憶がないんでしょ?」
エロ美月って…………でも松田さんは、それほど私自身に興味があるって訳じゃないと思う
だって彼の態度は会社でも全く変わらない。逆に意識しているのは私の方だ
酔うと絡んだり迫ったりする癖があることは瑠璃子に教えてもらった。
その醜態を瑠璃子は『エロ美月』と名付けて今だに瑠璃子の携帯録画の中にいる
「巨人兵って美月が一番苦手なタイプじゃなかった?」
「……………まあね」
呆れたように息を吐く瑠璃子に「ははっ」と引きつり笑いを見せる