その瞳をわたしに向けて

事が発覚してから一時間後に昼休憩に入った。緊張感があった部署内も、少し穏やかに戻っていた。


その中でただ電話が鳴るのを待つだけの仕事、午前中の一時間さえ長く感じるのに、午後からの長さを思うと気が遠くなりそうで溜め息がでる


もともと会社への電話から2課の誰かにかかってきた時は、総務から内線で各自のデスクの電話にかかってくる

今は美月がその内線を受けてその場にいない人の時は、会社用のPCを使って連絡を取るか、伝言して対応するかという感じだ


しかし今時は自分の担当は携帯にかかる様にしてある人がほとんどで、生命保険的な私用電話ばかりである



「大変だったね美月ちゃん、お昼どうする?外に行くなら付き合うよ」

いつもより多少気を使ってくれる田中さん

「いえ、朝コンビニでお昼買ってありますから。田中さんもお弁当ですよね、大丈夫ですよ。」

美月がまわりから気分転換できる様に、外に誘ってくれたのだろう。その気遣いには答えておこうと、にっこりと笑顔を見せた。

そんな美月に安心したのか、お昼の間は田中さんの松田へのお小言が炸裂した

「立花ちゃんがいないからって、ちょっと言い過ぎだと思うんだよね。あそこまで松田君が美月ちゃんを叱る権利があったのかって思うよ私は………」


そんな風に二人で部署内のパーティションで仕切られた、小さめのミーティングスペースでお昼を広げていると、美月のおにぎりの横にパックのアップルジュースがそっと置かれた。

顔を見上げると、にっこり笑いながら山崎主任がいた

「美月ちゃん元気?松田と一条には俺がしっかりと仕返ししといてやるからね。」



…………仕返しって、私のミスが原因だし、松田さんも悪者?

なんだか違う方向に風がふいてる様な………


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