そして星は流れて消えた
前編
5月半ば。
桜は散り、夏になる準備が始まっていた。
病室のドアが2回ノックされる。
「星華」
現れたのは、荷物をたくさん抱えたお母さんだった。
「あ、お母さん。どうしたのその荷物」
抱えていた荷物をどすっと地面におろすと、そばの椅子に座り、溜め息をついた。
「星華が病院で暇をもて余してるって言ってたからね、家から色々持ってきたのよ」
紙袋の中身は私がハマっていた少女漫画や、ゲームなどが大量に入っていた。
「お母さん仕事であまり来てあげられないから、ごめんね」
「いいんだよ。頑張ってるお母さん好きだから。弁護士は大変だね」
お母さんは弁護士をしている。
お母さん曰く、法曹界では結構やり手の女弁護士として有名らしい。
そのため日々忙しくしており、
依頼人のためならとても熱くなる。
お母さんのパンツスーツ姿は格好良くて、
昔から憧れていた。
今日もいつもの黒のパンツスーツだった。
「お父さんもあとで来るって言ってたわよ。もうすぐ来るんじゃないかしら」
そう言った矢先、ドアがノックされた。
「星華ちゃん来たよ」
黒のパーカーにジーパンを履いたお父さんが、花束を抱えてドアから現れた。
「お父さん、来てくれたんだ。今日お店は?」
「今日は休みにしてきたよ」
お父さんは小さな美容室を経営している。
お父さんが以前働いていた美容室に、お母さんが来たのがきっかけで結婚したらしい。
今でもふたりは仲良しだ。