そして星は流れて消えた
お父さんとお母さんが帰ったあと、
私は先生とふたりきりになった。
「あなたは、父親似ですね」
窓にもたれかかる先生に朝の日の光があたる。
「よく言われる。お母さんとお父さん、全く正反対の性格なんだよね」
お母さんは決断力のある、さっぱりした性格でキャリアウーマン。
それとは反対に、お父さんはおっとりしていて、家庭的だった。
「確かに雰囲気はお父さん似ですが、決めたことは突き通す、強い意思はお母さんに似たのだと思います」
「え?」
「…いえ、なんでもありません。それより、なぜあなたは写真を撮らないんですか」
あの日から、一ヶ月。
一ヶ月の間、私はまだ先生の写真を1枚も撮っていなかった。
「だって先生、カメラを向けたらかまえるんだもん」
写真を撮られるのが苦手らしく、
カメラを向けると顔がこわばる。
「苦手なんです」
先生は窓側の椅子に腰かけた。
「先生のもっと自然な姿を撮りたいの」
先生のクールな姿も好きだけれど、
笑顔が見たい。
病院にいる誰も見たことがないという笑顔。
私が一番に見たい。
先生は白衣が似合う。
このすらっとした体型、大きな手。
女子とは違う大きな背中。
陽が当たって、先生の髪が少し茶色に透けていた。
さらさらのストレート。
胸がときめく。
ああ、好きだ。
「先生」
「なんですか」