そして星は流れて消えた
「準備できましたか」
7月1日午前9時45分。
長袖から半袖に衣替えが始まる時期だった。
私も長袖の薄い水色のカーディガンの下に、半袖の白いワンピースを着ていた。
「これじゃ薄すぎるかな?」
「そっちのGジャンのほうがいいんじゃないですか」
それはベッドの上に脱ぎ散らかしている服の、一番右にあるジーンズ生地のジャケットだった。
「先生はこっちのほうが好き…?」
先生の好みは聞いたことがない。
可愛い系?
カジュアル系?
もしかして、セクシー系?
「そっちのカジュアルな方があなたに似合っていると思います」
先生が似合っていると言ってくれた。
それだけで嬉しい。
けれど"似合ってる"と"好み"は違う。
「先生の好みはどっち…?」
おそるおそる聞いてみる。
「そうですね…。僕の好みもカジュアルな方が好きです。気取っていなくて」
先生の好みはカジュアル系なんだ。
先生のことをまたひとつ知れた!
「天野さん。あとこれを」
先生に渡されたのは、白い小さな紙だった。
そこには黒いペンで電話番号が書かれていた。
「これってもしかして…」
「美空には何かあれば僕の携帯に連絡するように言ってありますが、もし万が一離れたときに何かあれば、この電話番号にかけてください」
先生の携帯の番号!
普通は患者に教えたらいけないはずなのに。
「僕の番号を教えたってことは内緒ですからね」
これは"特別"ってことだよね?
胸が高鳴るのがわかった。
「ありがとう…」