そして星は流れて消えた
「何を買うか決めてるの?」
ショッピングモールの2階を歩きながら、小夜ちゃんは私に聞く。
「何個か考えたんだけどね…お父さん以外の男の人にプレゼントしたことがないからわからなくて」
今日の小夜ちゃんは袖のない白いシャツに、黒の長いパンツ姿だった。
いつものナース服の小夜ちゃんとは雰囲気が違って、大人の女性に見えた。
小夜ちゃんの横を歩いていると、私の子供っぽさが際立つ。
先生には、小夜ちゃんみたいな大人な女性が似合うはず。
私みたいな子供じゃ、先生に釣り合わない。
このとき初めて、小夜ちゃんに嫉妬した。
「やっぱり、普段使えるようなものがいいわよね。あの店はどう?」
小夜ちゃんが指をさしたのは、スーツショップだった。
「やっぱり普段使えるようなものなら、ネクタイやシャツじゃないかな。私服で使うようなものをあげると、使ってくれてるかわからないでしょ?」
「そっか、確かに」
先生はきっと、ネクタイもシャツもは沢山持っている。
それは私自身の目で、毎日先生の姿を見ているからわかる。
それならあまり持っていないものをあげたいな。
一応ネクタイやシャツも見たけれど、先生に似合いそうなものはどれも持っていそうなものばかりでピンとこなかった。
どうしよう。
「星華ちゃん、これはどう?」
あ、これ…
「先生持ってないかも」
「でも、ちょっと高いかな?」
多少高くたって構わない。
この日が最期の買い物なんだから。
私の全財産をはたいたっていい。
「小夜ちゃん、わたしこれにする」
私はそれを手に取り、レジへ向かった。