そして星は流れて消えた
目をあけると、そこには見慣れた天井があった。
窓が開いていて、風が入ってきて気持ちがいい。
私はまだ夢見ごこちだった。
今が夢か現実かがわからない。
もしかしたら夢なのかな。
もし夢なら、どうかさめないでほしい。
どうか私に幸せになる夢を見させてください。
ふたたび私がまぶたを下ろそうとしたときだった。
「天野さん」
確かにわたしの耳がその声を拾った。
私はその声に導かれて、ふたたび目を開ける。
「も…ちづき…せんせい…………」
そこには、いつもの白衣姿の先生が立っていた。
いつになく、悲しそうな表情を浮かべていた。
と言っても、先生のことをよく知らない人には表情の変化なんてわからないと思う。
ただのポーカーフェイスにしか見えない。
でも私にはわかる。
2月からずっと、先生を見ていたんだから。
「…目をさましたんですね。体調のほうはいかがですか」
私は目をさましたばかりで、まだ頭がぼーっとしていた。
「うん…大丈夫」
「そうですか」
しばらく沈黙が続いた。
この沈黙を破ったのはわたしだった。
「私、あまり覚えてないの。でもね、私が意識を失うまえに最後に聞いたのは先生の声だった」
確かにはっきり聞いた。
先生が私を呼ぶ声を。
あれは夢なんかじゃない。
「あなたは、ショッピングモールで倒れた時に私に電話をかけてきました。あなたの近くにいた人が救急車を呼んでくれたようで、そのあと美空がかけつけてきたようです」
「そうだったんだ」
やっぱり先生に電話をかけたんだ。
最後に聞いた声も先生だったんだ。