そして星は流れて消えた

そんなことを考えていて、自分の世界に入っていた私は、反応するのに少し時間がかかってしまった。





いつの間にか私は、先生に抱き締められていた。


「先生…?」



先生の心臓の音が伝わってくる。







ああ。

先生の鼓動も少しはやい。




男の人の身体は、こんなにも大きくてごつごつしているんだな。



私なんてすっぽりおさまってしまう。





先生の体温が伝わってくる。



あたたかい。





「天野さん…いや、"星華"」




ーーードクン。




「先生…。あのときも、私のこと名前で呼んでくれたよね」



「電話のときは、焦っていたんです。つい口から出てしまいまして」



「嬉しかった。名前で呼んでもらえるだけで、こんなにも嬉しいなんて思わなかった」



「僕のことも、名前で呼んでいいんですよ」



「え、いいの?」



「だって、付き合ってるんですから」



先生を名前で呼ぶって、それは考えたことがなかった。



これは、究極に恥ずかしいし照れるじゃん!



「ほっ…」


一度深呼吸して、息をととのえる。



「北斗…っ」








「ふっ…」


ん?


いまなんか笑い声が。



「なんで1回息ととのえたんだよ」



先生が笑った!


見た人がいないと言われている先生の笑顔。




「先生、笑った…」



「そりゃ人間なんだから笑うでしょ」



そしてさっき感じた違和感。

先生の言葉遣いだ。


「先生、ため口になってる」



「ああ、そりゃプライベートでは敬語なわけないじゃん」




じゃあ私は先生の"プライベート"ってことだよね?



「敬語じゃない先生もいいかも」


いつもと違う先生を垣間見れて、私は嬉しかった。



この笑顔を見れるのも、ため口で話してもらえるのも、私の特権なんだ。





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