そして星は流れて消えた
中編
「先生、もう1度笑ってよー!!」
「嫌だ」
7月下旬。
だんだん蒸し暑くなり、夏も本番を迎えようとしていた。
あの日から、先生は1度も笑ってくれなかった。
このやりとりも何回目だろう。
「あんな先生のベストショット、写真におさめるしかないでしょ!」
「笑えって言われて笑えるもんじゃないから」
あのとき写真におさめていれば良かった。
後悔の念が私を襲う。
まだ写真はほとんど撮っていない。
全国高校生写真大会の応募締め切りは、12月24日のクリスマスイブ。
まだ先のようだけど、私の病態がいつ悪化するかわからない。
クリスマス、いや明日でさえどうなっているかわからない。
毎日不安でいっぱいだけど、先生が居てくれるから精神的にも、身体的にも安定していられる。
「どうしたんだ、そんなに見つめて」
無意識に先生を見つめていたらしく、先生に見つめ返されて顔が赤らんだ。
「な、なんでもないよっ!」
先生は二人きりのときは、タメ口で話してくれるようになった。
でも"星華"とは、あれ以来呼んでくれない。
私も"北斗"って呼びたいんだけれど、照れて呼べなかった。
「あのっ!ほっ…」
「なんだ?」
心の中では何度も練習したんだ。
だから本番でだって呼べるはず!
「ほっ…ほく…」