そして星は流れて消えた

彗は見た目だけで、よく怖がられていた。


私も初めは怖くて、話しかけられなかった。

けれど、話してみると見た目とは裏腹に純粋で、話しやすいやつで、今では仲良しだ。


「体調はどうだ?」

「うん、大丈夫だよ」


「長いこと入院してるから、みんな心配してたぞ」

「そっか…久しぶりにみんなに会いたいな」


「2学期から戻ってこれそうか?」

その言葉に、私は固まった。

学校の人たちには誰にも、病気のことは言えていなかった。


"私はもう、学校には戻れない"なんて、言えるわけがなかった。


「どうだろう。まだ、わかんないや」

私は誤魔化しながら笑った。



「そういえば、もう大会の写真のテーマは決めたの?」

私は何気なく話題を逸らす。

「ああ、一応な」


「なに?」


「俺は日常の風景っていうか、何気ない普段の日常の一瞬を撮りたいなって」

「いいじゃん」

「去年の大会の結果は悲惨だったしな」


今年3月に先輩が卒業し、新入部員もあまり入らず、写真部は部員が減ってしまった。

今回の大会は、入賞し新入部員を増やすのは目的のひとつだった。

「はやく帰ってこいよ、天野。天野がいないと部も活気づかねえよ」

「…頑張るよ」


私だって、帰りたいよ。



ーーコンコン。

再び響くノックの音。

「あ、はいどうぞ」


「星華、フルーツ買ってきたわよ…って、あらお客さんきてたの?お邪魔したかしら」

入ってきたのはお母さんで、買い物袋を提げていた。

「いえっ、大丈夫です!俺は天野さんの同級生の雨宮彗です。はじめまして」

「そうだったの。星華がいつもお世話になってます」

「いえ、こちらこそです」


「じゃあ彗くんもフルーツ食べてく?色々買ったんだけど買いすぎちゃって」

「いいんですか?」

「ええもちろん」

「じゃあ、いただきます。俺、全員分の飲み物買ってきますね!何がいいですか」

「そう?じゃあお茶でお願いしてもいいかしら。自販機はナースステーションを左に曲がってまっすぐにあるわ」


「ありがとうございます」


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