そして星は流れて消えた
ガシャン。
俺は自販機でお茶と水と炭酸を買った。
久しぶりに会った天野は、少し痩せていた。
元気そうに見えたが、心配になった。
まだ学校には戻れないのだろうか。
「…で……じゃないの?」
女性の声が聞こえてくる。
ふと左を見てみると、白衣の先生らしき男性と看護師の女性が、何か神妙な面持ちで話していた。
この雰囲気では出ていけず、俺は話が終わるまで待つことにした。
病院は忙しいはずなので、話もすぐ終わるだろう。
「私たち、寄りを戻さない?」
復縁の話だろうか。
病院でこんな会話をしていていいのか、仕事しろよ。
「戻すわけがないでしょう」
白衣の先生は看護師に素っ気ない態度だった。
「何故こだわるの?あの子に」
俺は廊下の壁に隠れた。
盗み聞きをしていたわけではなかった。
でも、聞こえてしまったんだ。
「天野さんは…もう長くないのよ?あまり期待をさせたらいけないと思うわ」
え?
いま、何て言った?
"天野さんはもう長くない"
天野は、もうすぐ死ぬってことか?
いやまさか。
天野なんて名字、多くはないがそんなに珍しくない。
きっと人違いだ。
「べつにこだわっているわけじゃない」
「嘘よ。あなたがあんなに執着するなんて。あんな高校生の子供に…」
「…とにかく、業務に戻ってください。僕はあなたの話すことは何もありません」
白衣の先生は看護師に見向きもせず、背中を向けて立ち去った。
やはり聞き間違いでも、人違いでもなかった。
天野は、もうすぐ死ぬんだ。