そして星は流れて消えた
『私、さっき悪性の脳腫瘍って言われたの。あと1年もつかわからないって…』
まだ高校生なのに。
将来やりたいこともあるのに。
大人にもなれないなんて、運命は残酷だと思った。
『なんで……私なのかな。死ぬだなんて、全然実感わかないや。夢なら早く醒めてほしい』
一度止まった涙がまた溢れ始めた。
一生分泣いたような気がした。
『もう1年しかない。学校に行って勉強したって、未来のない私には何の意味もない。何をやったって意味がないわ』
涙がもう枯れても良いくらいなのに、まだ溢れてくる。
未来のない私に絶望した。
『……だったらあなたは、残りの1年そんなふうに泣いて過ごすつもりなんですか』
先生がぽつりと言った。
『あと1年しかないって思うか、まだ1年あると思うかはあなたの自由です』
"あと1年しかない"
私は宣告を受けて、絶望した。
私に未来などないと。
でも、
"まだ1年ある"
そんな発想は微塵もなかった。
1年あれば、私にできることはあるのだろうか。
『悔いのない選択をしてください』
そう言い残して、白衣をなびかせながら先生は去っていった。
その姿は今も目に焼き付いて離れなかった。
あのときから私は、先生の虜だった。
そして偶然にも、先生は脳神経外科で私の担当医になった。