そして星は流れて消えた
ーーパシャ。
私は衝動的にカメラを掴んで、シャッターを切っていた。
「ちょっ…なに撮ってるんだよ」
いつもはベストな瞬間を逃してしまっていた。
でも今回は勝手に身体が動いて、シャッターを切ってしまっていた。
その表情を、瞬間を、どうしても写真におさめたくなった。
「ごめん。つい」
先生は怒るのかと思いきや、むしろさらに照れているように見えた。
「うわ、恥ずかしい」
「先生可愛い」
「…うるさい」
「嬉しいよ」
泣きたいほど、その嫉妬が嬉しかった。
先生のそばに、少しは近づけているかな。
先生が少しでも、私のことを考えてくれるようになったのかな。
私がいなくなっても、先生の心に少しでも私が生きてたらいいな。
私が先生を好きだったこと、ずっと忘れないでほしい。
「北斗」
ああ。
いまこの瞬間、先生の瞳に私だけが映ってる。
ずっとそうであればいいのに。
「好き」
そう言うと同時に、視界がぼやけた。
涙が目にたまって先生がはっきり見えない。
涙のせいで声も震えた。
「すき…」
何回言っても足りないと思った。
"好き"の2文字だけでは、伝えきれない想いがたくさんあった。
でも今は、これ以上の言葉が見つからなかった。
「なんで泣いてるの」
先生は私がなぜ泣いたかわからなくて戸惑っていた。
当たり前だよね。
目の前で急に泣かれたらわけわかんないよね。
「幸せなの」
いま、一番幸せかもしれない。
大好きな人のそばにいれて、名前で呼んでもらえて。
今の私がいるのは、初めて出会ったときの裏庭での先生の言葉があるからで。
先生と出会わなければ、私はいまこうやって嬉し涙を流せずに、幸せだと思えずに悲しみだけの涙を流して過ごしただろう。
「わたし死にたくないよ」
一番言ってはいけない言葉を言ってしまったと思う。
「わたし死にたくない」
自分がもうすぐ死ぬという事実を、きちんと受け入れていたはずだった。
なのに急に怖くて仕方がなくなって。
叶わないのに、
生きたいだなんて願ってしまう。
なんて運命は残酷なんだろう。
「星華」
先生の声は、闇を裂く一筋の光のようだった。
いつも私を照らしてくれていた。
「星華、俺のほう向いて」
先生の低い綺麗な声が好きだ。
声に導かれて私は先生の方を見た。