そして星は流れて消えた

「昨日は目覚める前に帰ってごめんな」


次の日、彗はまた私の病室をたずねてくれた。

「私こそ、突然苦しみだしてびっくりしたよね」

「体調、大丈夫か」

「うん。今は全然痛くないよ」

彗は今日も元気がない。
会話が続かず、沈黙が流れる。

「あ、お菓子とか食べる?私食べないからさ。確かそっちの机に…」

私が机に手を伸ばそうとしたときだった。

「天野」

彗に突然よばれ、私はお菓子を手に取る前に彗のほうへ振り向いた。

「ん?」

「好きだ」


え?


「すい…?」

「天野のこと、ずっと好きだった」

突然の告白に、私は頭が真っ白になった。

彗の瞳は、私の瞳を真っ直ぐ見つめていた。
少し悲しさの混じった、切ない表情をしていた。

真剣なようだった。
彗は冗談でそんなことを言う人ではない。

今まで、彗は私に気があるような素振りを見せたことがあった?
私が気づいていなかっただけなのかな。

「いつ、から?」

「写真部入ってすぐくらいかな」

「全然気づかなかった」

「天野はにぶいな。俺はずっと、天野のこと見てたのに」

私は、彗のことを恋愛対象として見たことがなかった。

確かに彗は格好いいと思う。
背も平均よりも高いし、勉強もとてもできるわけではないけれど、普通にできる。

中学はサッカー部だったらしく、運動神経が良い。
体育で100メートル走のタイムを計ったとき、陸上部の男子を抜いて学年トップだったこともある。

そのとき、まわりの女子は格好いいって騒いでたっけ。


なんで彗は、私を好きなんだろう。


私は可愛いわけでもないし、綺麗なわけでもない。
勉強ができるわけではないし、運動神経がいいわけでもない。
クラスで目立つような存在でもなくて、比較的大人しいグループにはいると思う。

彗がわたしを好きな理由が全く見つからなかった。

「なんで、私なの?」

彗は1年も私を見ていてくれたんだ。

脳腫瘍でもうすぐこの世からいなくなる私に、わざわざ告白をしてきてくれた。
彗は私を、本当に好きでいてくれたんだ。

「俺が、中学のときサッカー部だったって知ってるよな」

「うん」

「もちろん高校でもサッカー部に入るつもりでいたんだ」

「じゃあ、なんで写真部に…?」

脚を怪我したとか、そんな話は聞いたことがない。
写真部に入った理由に見当がつかなかった。

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