そして星は流れて消えた
「天野だよ」
「え?」
「入学式のときに天野さ、桜の写真撮ってたろ」
確かにそうだった。
入学式早々、一眼レフを構えて桜の写真を撮っていた。
「なんで知ってるの?」
入学式の時にはまだ、彗とは出会っていないはずだ。
彗と出会ったのは、写真部に入った高校1年の5月だった。
「見てたから」
「え?そうなの」
「あまりにも夢中に、楽しそうに撮ってる天野を見てたら、俺もなんだか写真撮りたくなっちゃってさ。いつの間にか入部してた」
私がきっかけで、彗は写真部に入ったんだ。
意外な理由に私は驚いた。
「今は、入って良かったと思ってる。写真撮るの楽しいし、天野のそばにいれたから」
確かに写真を撮り始めると、夢中でまわりが見えなくなることも時々あった。
そんなふうに言ってもらえるほど、私はいつも楽しそうに写真を撮っているんだろうか。
「先生なんてやめとけよ」
彗は真剣な眼差しで私を見つめた。
「天野は、あの先生が好きなんだろ」
私が先生を好きなことは、言わずともバレバレだったみたいだ。
「うん」
私は、隠すつもりは全くなかった。
「天野があの先生を好きでも、俺は諦めるつもりはない」
「彗…」
「夏休みの間、病院に毎日来る。夏休みの最終日までに天野が振り向いてくれなかったら、俺は潔く天野を諦める。だから、告白の返事はまだしないでほしい」
"私は先生以外の人を好きになることはない"
彗の真っ直ぐな言葉は、私が言おうとしていたこの言葉
を飲み込ませた。
私は、なんて答えて良いのかわからず、何も話せなかった。