そして星は流れて消えた
「先生の白衣姿の写真撮らせて」
満月ちゃんの部屋をあとにして、自分の病室に戻ると、私は箪笥の上に置いていた一眼レフカメラを取り、先生に向けて構える。
「嫌です」
「いいじゃん減るわけでもないし」
「嫌です」
「先生格好いいから、良い被写体なんだよね。今度写真部で全国高校生写真コンテストに応募するの。だから撮らせて、ね?」
「嫌です」
「一生のお願い!」
「この前も一生のお願い聞きましたけど」
「うっ……ケチ。」
私は口を尖らせてベッドの上に寝転んだ。
「あなたは」
先生がぽつりと言った。
「あなたはなぜ僕に構うんですか」
「なぜって……」
「患者からも、看護師からも、同僚の医者からも僕は冷たいと言われています」
「知ってるよ」
「ならなぜですか」
「先生は優しいから」
「優しい……?」
私は先生がこちらを向いた瞬間、
ベッドの上にうつ伏せになりながらシャッターを切った。
「先生は私に悔いのない選択をしなさいって言ったじゃない」
もう一度シャッターを切る。
「私は高校では写真部で、卒業までにコンテストで入賞することが夢だった」
私は起き上がり、ベッドに座りなおす。
「私が学校を休んで、ちゃんとした治療も受けず入院しているのは、来年の1月にあるコンテストのために"望月先生の写真を撮る"って言う、悔いのない選択をしたからだよ」
先生に初めて会ったあと、私は治療をしないことを決意した。
治療を始めたら大好きなカメラを切れない。
この選択に悔いはなかった。
「だからね、先生は私の生きる意味なんだよ」
私は先生に笑いかけた。