そして星は流れて消えた
お昼過ぎ、彗はまた私の病室にやって来た。
「なあ、天野」
今日の彗も、英字が書かれた白のTシャツにジーパンとラフな格好をしていた。
「なんでそんなに元気ないの」
いきなり核心を突いてくる。
それもそのはず。
ぼーっとしているのは、自分でもわかっていた。
「なんでもないよ」
「何でもないわけないだろ。俺には話せない?」
自分を好いてくれている人に、自分が好いている人の話をするのはどうなんだろう。
そう思いつつも、私は彗に昨日の夜の出来事を話した。
先生に関する話だとわかると彗は渋い顔をしたが、それでも真剣に聞いてくれた。
「許嫁ねえ…」
彗は話を全て聞き終わったあと、大きな溜め息をついた。
「やっぱあんなやつやめとけって」
「……」
先生はなんで"付き合おう"なんて言ったのだろう。
私がもうすぐ死ぬから、同情して仕方なく?
そんなの嬉しくない。
私がまだ16歳の高校生の子供で、恋愛経験もまるでないから嘘を突き通せると思った?
先生の存在と、言葉だけは無条件に信じていた。
好きだった。
ああ。
何だろうこの虚無感は。
私はもう、どうしたらいいかわからない。