そして星は流れて消えた

裏庭のベンチ。
ここが一番静かで落ち着いて話せる場所だった。

「単刀直入に伺いますが」

先導して歩いていた俺は、美空さんのほうを振り向き言った。

「あなたと望月先生はどのような関係ですか」

俺はベンチに腰を掛けた美空さんに問いかける。

「どのようなって…」

「本当はもう、望月先生とは終わってるんですよね」

美空さんはなんで知ってるのと言わんばかりの驚いた顔をした。
事実だということは明白だ。

「この前、望月先生とあなたが廊下で話していた会話を偶然聞いてしまったんですよ」

俺がそう言うと美空さんはふうっと溜め息をつき、ベンチの背もたれにもたれかかり、右足を上にして脚を組んだ。

「…で?なにを言いたいのあんた」

さっきまでの仕事モードからの変わり様。
性格が悪い女性だな。
なら俺も、敬語なんて使わない。

「美空さん、汚い手使うよね」

そういうと、ふっと俺を嘲笑うかのような笑みを浮かべた。

「あんな子供に北斗をとられたらたまんないわ。だって院長の息子よ?将来的には、この病院の院長になる人よ?」

「それだけ?」

「それだけって、玉の輿よ?誰もが憧れるわ」

「望月先生のこと、好きなの?」

お金しか興味がないのか、望月先生自身も好きなのか。
気持ちがあるかないかで、俺がこの人に"協力する"か"協力しない"かが変わってくる。

「好きなわけないじゃない。あんな堅物」

好きでもない男と結婚して幸せになれるのだろうか。

愛よりもお金。
お金があれば幸せ?

俺はそうは思えない。

好きでもない男と結婚しようと思える、美空さんの気が知れなかった。

それとも俺は、まだまだ子供なんだろうか……。

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