そして星は流れて消えた
「彗、どこ行ってたの?」
お手洗いへいくと言ったきり帰ってこなかった彗が、1時間後病室に戻ってきた。
「お手洗いに行くって言ったきり帰ってこないから、心配したじゃない」
「ごめん、ちょっとな」
最近の彗は、昔と少し変わった気がする。
それは、彗が私を好きだと知ってしまったからなのか。
彗が変わったんではなくて、私の彗に対する見方が変わってしまったのだろうか。
「なあ天野」
「なに?」
「天野は、望月先生に相手がいたとしても好きでいられるか?」
突拍子もない質問に私は答えられなかった。
先生に小夜ちゃんという相手がいたとして、私はどうするべきなのか。
選択肢は3つ。
1.先生を諦める。
2.相手がいると知りながら、このまま付き合う
3.小夜ちゃんと別れてもらう
2番は、私としては一番したくない。
かと言って、諦めるなんて私にできる?
小夜ちゃんと別れてもらうなんてできるのだろうか。
できるわけない。
だって私はもうすぐ死ぬ身。
これからまだ先のある小夜ちゃんと別れてまで、もうすぐいなくなる私を選ぶわけがない。
私はもう、諦めるしか選択肢なんてないじゃない。
「わたしもう、先生を諦める」
これでいいんだ。
これで……
「天野……」
「大人の先生が、16歳の高校生の子供を好きになるわけがない。しかも私、もうすぐ死ぬんだよ?諦める以外の選択肢なんてないよ」
悔いのない選択をしたつもりだった。
私の願いは2つ。
ひとつは全国高校生写真コンテストで入賞すること。
もうひとつは、先生に好きだと伝えること。
そのために私は治療もまともにせず、学校にも行かずこの病院に入院した。
思えば私の願いは1つ達成していた。
望月先生が好きだと伝えたはずだった。
でも私はいつの間にかそれ以上のことを願っていた。
望んではいけなかったのに。
だからもう、十分だ。