そして星は流れて消えた
「望月先生?いま休憩に行ってるよ」
脳神経外科の控え室を訪れると、望月先生の姿は見当たらなかった。
「休憩ってどこに?」
白衣を着た白髪の混じった50代くらいのお医者さんは、私に余命を告げた先生だった。
「さあ、そこまでは知らないな」
「そうですか…」
先生の居場所が掴めず、私は落胆した。
でも会えなくて、少しほっとした部分もあった。
勢いで病室を出てきたので、まだ何を話すか心の整理ができていなかった。
「天野さんは最近体調はどう?」
白髪の先生はコーヒーを飲みながら、私に尋ねる。
「大丈夫です」
そういえば、1つ疑問に思っていたことがあった。
そんなに珍しいことではないかもしれないと、あまり深くは考えたことはなかったけれど。
「あの、1つ聞いてもいいですか」
「なんだい」
白髪の先生はコーヒーカップを置いて、こちらを見た。
「普通、診察を担当した医師が担当医になるものじゃないんですか?」
先生が担当医になったのは、偶然なんだろうか?
そんな偶然あるのだろうか?
「基本的にはそうだね。確かに最初、天野さんの担当医は僕だったんだよ。でも、望月先生が君の担当医を志願してね」
え?
それは初耳だった。
先生はそんなこと一言も言ってくれなかった。
「どうしてですか?」
「それは本人に聞いてみないとわからないけれど、"責任をとりたい"と言っていたよ」
私は"責任をとる"という言葉が、どのような意味を持つのか悟った。