そして星は流れて消えた
「先生には、付き合っている相手がいるんでしょう?大切にしなきゃ」
先生にはちゃんと幸せになってほしかった。
小夜ちゃんと結婚して、子供をつくって…
想像したくなんてないけれど、いまの私には先生の幸せを願うことしかできない。
「付き合っている相手…?なんの話だ」
「え?」
私はきょとんとする。
「先生には許嫁がいるんでしょ?」
「許嫁?」
先生が私以上にきょとんとしている。
「小夜ちゃんが許嫁なんでしょ?」
先生はそれを聞くと、"あいつ…"とつぶやいて溜め息をついた。
「それは半年前までの話だよ。ちょうど星華が入院してすぐくらいに、俺からその話は白紙にした」
どういうこと?
「美空の言ったことは嘘だ。美空は俺と結婚して院長婦人になりたかっただけだろ。俺のことを好きなわけじゃない」
嘘?
小夜ちゃんの言ってたこと全部?
「なに俺より美空の言うこと信じてるんだよ」
私が先生を好きになったのは、あの真っ直ぐな言葉だった。
"あなたは残りの一年、
泣いて過ごすつもりなんですか?"
あのとき、この人の真っ直ぐな瞳にドキッとした。
私が好きになったのは、先生の真っ直ぐなところだった。
優しいけど、少し不器用な優しさに私は心を持っていかれた。
なんで私は先生を疑ったんだろう。
先生は嘘をつくような人ではないって、なんで思えなかったんだろう。
先生を疑ってしまった自分が嫌になった。