そして星は流れて消えた



「ここにいたんですか」


私の後ろからいつもの低い綺麗な声が聞こえた。


私は屋上でベンチに座りながら、
遠くに見える海をぼーっと眺めていた。




今日は日差しもあまりなく、
過ごしやすい4月の陽気だった。


「いくら4月で暖かくなったと言っても、そんな薄着では風邪引きますよ」



私はTシャツにグレーのパーカーを羽織り、
下はジャージの長いパンツを履いていた。

言われてみれば、確かに寒い。


言われるまで気づかなかった。




「ねえ先生。運命って残酷だね」

私は遠くを見ながら呟いた。



「307号室のあの子…今朝亡くなったそうですね」



信じたくない。

昨日まで普通に話をして笑っていた満月ちゃんが、もうこの世にはいないなんて。



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