キミに出会うまで
まもなく、森さんはやってきた。


「あれ、今朝そういうの巻いてなかったよな?


なになに、俺とのデートに気合い入ってるわけ?」


「そんなんじゃないし、まわりの女子の視線が気になるだけだし!」


「怒んなよ、似合ってんじゃん」



なんで、そういうこと、さらりと言うかな。


何も言い返せないじゃん。



ジュースを買って席について。


観たかった映画の世界に酔いしれた。


初恋の相手と15年ぶりに再会した男女が、いろんな障害を乗り越えて、結婚するまでのラブストーリー。


お互い付き合ってる人がいたのに、同窓会で再会して、忘れていた気持ちがよみがえって。


付き合っていた人とのいざこざや、お互いの仕事や、家族のこと。


結婚って大変なんだと思ったけれど、主演の俳優のファンでもある私は、ハッピーエンドで良かったと満足した。



映画館を出たら、もう21時。


「どっかでなんか食べていく?」


「・・・うーん」


「なに食べたいんだ、おごるよ」


「でも、森さん病み上がりだし、帰ったら?」


「もう平気だから、気にすんな」


「じゃあ、森さんが食べたいものにしなよ」


「そっか、じゃあこっち」



連れていかれたのは、大通りから入った路地裏の、小さな和食屋さんだった。




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