キミに出会うまで
「えっ?」


てっちゃんの言葉が、頭に入ってこなかった。


「ごめん、優花とは結婚できないし、その子を認知するつもりもない。


アイツとは別れない」




私は、あまりにもショックで、そのまま黙って店を出た。


グラスの水でもかけてやればよかったけど。


てっちゃんとは、それっきり。


お金ももらわなかった。


そこは、私の意地だ。


何度か連絡はきたけれど、出なかった。




赤ちゃんは、精神的なショックからか、流産してしまった。


まだ小さかったとはいえ、ひとつの命だ。


浅はかな私のせいで、産まれるかもしれなかったひとりの子供を、私はなくしてしまった。


< 11 / 215 >

この作品をシェア

pagetop