キミに出会うまで
一人で帰れるって言ったのに、森さんは送ると言いはるから、送ってもらうことにした。


まさか、森さんが私を好きだなんて思わなくて。


今日のために準備して、ふたりでごはんを食べるまでは、すごく楽しかった。


好きって言ってくれて、めちゃくちゃ嬉しかった。



でも、並んで歩く微妙な距離があらわしているように、さっきから会話もない。



ほんとは、私も森さんが好きだって、言いたい。


でも、言ってしまったら、その瞬間から不安でいっぱいになってしまう。



「優花」


「うん?」


「俺、優花のこと好きでいていいよな?」


なんて言えばいい?


無言の時間が増えてゆく。


「・・・それも無理か」


自嘲ぎみに笑う森さん。


だめだよ。



「ちがうよ、あの人とはもう終わった」


「じゃあ、どうして俺と付き合えないんだよ」


「ごめん、今は誰とも付き合えない」



なんて高飛車なセリフ。


だけど、それ以外に思いつかなかった。


「ここでいいよ、今日はありがとう」


駅の改札を通る私を、森さんはそれ以上追ってはこなかった。






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