キミに出会うまで
「優花さ、俺考えたんだけど。


お互い、前の相手を無理に忘れなくてもいいんじゃねーかと」


「どういうこと?」


「もう終わったことだし、それより俺は、これから優花と過ごす時間を大切にしたいから」



ふたりで過ごす時間。


いいのかな。


ふたりで過ごしても。




カウントダウンイベント会場に着くと、人がたくさんいて。


はぐれてしまいそうで、思わず森さんの上着の袖口をつかんだ。



森さんは私の手をそっと外すと、左手で私の右手を握った。


驚いて森さんを見上げると、


「これぐらいいいだろ」


笑っていた。


その笑顔が、もっとみたくなった。



会場は、色とりどりのイルミネーションで照らされて、みんな楽しそう。


今なら、言えるかも。


ほんとうの気持ち。



「私も、森さんが好き」



小さい声で言ったから、聞こえないと思ったのに。


私の右手をギュッと握って、


「俺は、それ以上に優花が好き」


また笑ってくれた。


ねえ、私の隣で、ずっと笑っていてくれる?


そしたら、私のこの不安も、消えていくような気がした。


気持ちが通じあった12月31日。


絶対に忘れないよ。





この時は、いつまでも続くと思っていたのに。


ふたりの幸せを、離したくなかったのに。


どうして、壊れてしまったんだろう。









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