キミに出会うまで
その日の帰り。


さすがに今日は残業する人はいなくて、明日香先輩は和真さんとゆっくり過ごすっていうし。


ひとみちゃんも、彼氏とデートだっていうし。


帰り支度をしてエレベーターに乗ろうとしたら、偶然を装って森さんが隣に来た。


「お疲れさま」


「お疲れさまです」


さっきの、スマホのやりとりを思い出す。



『うちに来ない?』


『行っていいの?』


『当たり前だろ』


『じゃあ、家飲みしよっか』


『電車は一緒でもいいだろ』


『うん、いいと思う』



恋愛初期って、こんなんだっけ。


あまりにも久しぶりすぎて、新鮮。





「なんか、ドキドキするね」


「そんな風には見えねーけど」


「なに食べたい?」


「そうだな、優花が作るなら何でもいいけど」


「その返事、一番困る」


「じゃあ、カレー」


「カレーなら多目に作って冷凍しとけば、一人の時でも楽だしね」


「一緒に食べればいいじゃん」


「毎日一緒に食べるわけにはいかないでしょ」


「俺は、毎日一緒に食べたいけど」







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