キミに出会うまで
話しながら森さんの家の最寄り駅に着いて、スーパーに寄る。


「チキンカレーがいいかな」


「あ、俺もチキンカレーの気分かも」


「あとはサラダだね」


「こうしてるとさ、新婚みたいじゃね?」


「まだ付き合い始めたばかりじゃん」


「いいじゃん、優花の得意な妄想してんだよ」


「妄想なんて得意じゃないし」




たしかに、ふたりで一緒に買い物して、同じ部屋に向かっている今。


結婚したら、こんな風に過ごす時間もあるんだろうな。




私が食事の用意をしている間に、森さんはお風呂に入って。


キッチンにいる私を、後ろからシャンプーの香りがフワッと包みこんだ。


「優花、お待たせ」


「うん、もうすぐできるよ」


「あと何分くらい?」


「10分くらいかな」


「優花、こっち向けよ」


「ダメだよ、カレーが焦げちゃう」


「少しくらい、いいじゃん」



甘いキス。


何度も何度も、重なる唇。



「そんなヤバイ顔すんなよ」


「ヤバイ顔って、なに?」


「襲いたくなる」


「ダメ」


「だよな、まだ名前で呼んでくれねーし」



やっぱ、気にしてたんだ。



「ごはん食べよ」


「そうだな」



チキンカレーにサラダにビール。


月曜だから、あんまり飲まなかった。



後片付けをして、ソファーでコーヒーを飲んでくつろいでたら、もうすぐ10時。


「そろそろ帰らないと」


「送るよ」



さみしそうな顔を見たら、急に、いとおしくてたまらなくなった。



「ねえ」


「ん?」


「大好き、優樹さん」


「さん、は余計だから、やり直し」


「優樹、大好き」


「俺も、優花がすげー好き。


好きすぎて、おかしくなるくらい」



どちらからともなく、重なる唇。


名残惜しくて、でもまた会社で会えるから、嬉しくて。




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