キミに出会うまで
髪と体を洗って、ゆっくり湯船につかって。


ふいに、恥ずかしくなって目線をそらすと。


「優花、こっち見ろよ」


「うん」


「俺は、ますます優花が好きになった」


「私も、優樹が好きだよ」


「俺たち、まだ始まったばっかだけど、ずっと一緒にいような」


「うん」


「腹へった、今日のは自信作だからな」


「楽しみ」



優樹が作ってくれたのは、ビーフシチューだった。


「なにこれ、めちゃめちゃおいしいんだけど」


「だろ、これだけは自信あるんだよな」


シチューにワインにサラダにバゲット。


ふたりできれいに完食して、一息ついたら。



「あと、小さいけどケーキあるから、食べる?」


「食べる!」


「優花は食い気だけかと思ってたけど」


「けど、なに?」


「色気もあんのな」


「そういうこと、真顔で言う?」



コーヒーと一緒に用意してくれた小さなホールケーキには。



『ゆうか たんじょうびおめでとう』


『これからもずっとよろしく』



泣けるメッセージプレートがのっていた。



「・・・もったいなくて、食べられないよ」


「写真撮ればいいだろ」


「せっかくだから、ふたりで撮りたい」



そこから、スマホをどこに固定するかで悩み、ティッシュボックスやリモコンを駆使して、それぞれのスマホで撮った。


大切な大切な写真。



「優樹ありがとう、今までで一番嬉しい誕生日だよ」


「喜んでくれて良かった」


< 150 / 215 >

この作品をシェア

pagetop