キミに出会うまで
送別会はすごく盛り上がって、みんなが優樹との別れをさみしがっていた。


「森さん、また本社に来てくださいねー」


「森さんいなくなったら、誰にパソコンのこと聞けばいいんですかー?」


「私も横浜支店に行きたーい」


女子社員の黄色い声も、気にはなったけど、今日は我慢した。


明日香先輩いわく、私の顔は相当ひきつってたらしいけど。




もうすぐお開きになる頃、優樹からメッセージが届いてて。


『これから部長たちと二次会に行くから、家で待ってて』


『わかった、気をつけてね』


返事をして、明日香先輩とひとみちゃんと話してから、優樹の家に向かった。


コンビニに寄ってミネラルウォーターを買って、お風呂に入って。


ちょうどソファーに座って髪をタオルでふいていたら、優樹が帰ってきた。


「ただいまー♪」


「おかえり、お疲れさま」


「濡れた髪が色っぽいじゃーん」


「少し酔ってる?」


「酔ってるよー、楽しい酒だったから」


「とりあえず着替えたら?」


「うん、そうする」


私が手渡したミネラルウォーターをゴクゴク飲むと、ネクタイをゆるめて着替えに寝室へ行った。


スーツを受け取って、ハンガーにかけてクローゼットにしまう。


「ありがと」


私を抱きしめる腕に、力が入る。


「落ち着くー、優花の香りがする」


「優樹、やっぱり女子社員に人気だね」


「最後だから言ってるだけだろ、妬いてんの?」


「妬いてんの」


「やけに素直だな」


「だって・・・」


「安心しろよ、俺は優花しか見てないから」


「うん」


「シャワー浴びてくるから、待ってて」


そっとキスして、お風呂場に向かう優樹の後ろ姿を見て、やっと私だけの優樹になった気がした。


異動があっても、大丈夫だって自信をもてた。














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