キミに出会うまで
空洞
あの日から、スマホの電源は入れっぱなしだけど。


優樹から連絡がくることはなく、夏休みは過ぎていった。



夏休みは、ほぼ家から出ないで、ゴロゴロしてばかりいた。


もうすぐ、優樹の誕生日だ。


なんとなく、開いていなかったメールやLINEを、読んでみた。


『優花、どこにいる?


悲しませるようなことをして、本当にごめん。


心配してるから、連絡して』


『アイスありがとう。


優花を探している間に、溶けちゃったんだ。


新しいのを買って、一緒に食べよう』


『合鍵、忘れてる。


いつでも取りに来ていいから、待ってるから』


『土屋さんや和真さんを通して、優花が家に帰ったって聞いた。


無事でよかった』


『言い訳になっちゃうけど、説明させて。


まゆみから、引っ越し先に家具を持っていきたいって連絡があったんだ。


サイズを測ったり、写真を撮ったりしてから、ソファーで休憩してたら、いきなり抱きつかれた。


やり直さないかって、言われた。


もちろん、断った。


優花は誤解してるけど、連絡あるまでまゆみのことは忘れてたよ。


俺には、優花しかいないから』



優樹の書いている内容は、たぶん本当だと思った。


でも、一度ゆらいでしまった気持ちは、どうしていいかわからずに、宙に浮いたままだった。


右手薬指に光る指輪は、外せないまま。






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