キミに出会うまで
実家の車を借りて、運べるだけの荷物を積んで優樹のマンションに向かった。


「優樹の運転みるの、函館以来だね」


「そうだな、夏休みの旅行キャンセルしたからな」


うっ、墓穴ほった。


「・・・ごめん、私のせいで」


「いいんだ、整理するいいキッカケになったんだからさ」



運転してる優樹の横顔を見るの、けっこう好きかも。


真剣な眼差しや、譲ってくれた対向車に片手を挙げる仕草や、片手でハンドルを握る男っぽさ。



「なにみとれてんだよ」


「え、かっこいいなぁって思って」


「珍しく素直じゃん。


帰りは優花が運転すれば、俺もみとれてみたい」


「たぶん、ハラハラして違う意味でドキドキすると思うけど」


「俺もそう思う」


「何よそれ、見たことないのに」



こんな何でもない会話ができることが、幸せなんだね。



「そういえば、どうして結婚するって言ったの?


私、同棲するって言うと思ったよ」


「すぐに結婚したくなったから」


「ええっ?」


「早く、俺だけの優花になってほしかったから」


「優樹・・・」


「ほんとはさ、今すぐ籍だけ入れたいんだけど、両家顔合わせ終わってからな」


「うん」



私も、ついに結婚するんだ。


まだ実感わかないけど。


明日もあさっても、一年後も十年後も。


ずっと一緒にいるんだね。






優樹のご両親は、12月初めに来てくれて。


両家顔合わせは、なごやかにすすみ。


あとは、籍を入れる日を決めるだけ。



だけど、なんか忘れられてる気がしてた。


正式なプロポーズの言葉。


それっぽいことは言ってくれたけど、別に映画やドラマみたいな派手なシチュエーションじゃなくていいけど、一生に一度のことだし、きっちり言ってほしかった。


あのまま同棲を始めて、週末は実家へ遊びに行くついでに荷物を取りに帰って、年末だから平日はお互いに忙しくて。













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