キミに出会うまで
洗面所には、タオルと拭き取るタイプのメイク落としが置いてあった。


新品のメイク落としと歯ブラシに、フワフワした厚みのあるタオル。


メイク落としと歯ブラシは、私を気遣ってコンビニで買ってきてくれたんだろう。


でも、タオルは普段使いのものだと思った。



キレイに磨かれた鏡。


きちんとたたまれたタオル。



リビングも寝室も、余計なものはほとんどなくて、男性の部屋らしかったけど、ウォールラックやチェストが、女性の好みじゃないかと思った。



「なにジロジロ見てんだよ」


バレた。


「あ、いやその、部屋がキレイだから、彼女がいるのかなと、思いまして」


「おまえには関係ないだろ」


「そうですよね、すみません。


メイク落としと歯ブラシ、買ってきてくださってありがとうございました」


「それはいいけどさ、おまえ、スッピン子供みたいだな。


アラサーには見えねーな」


「素直に『若くてかわいい』って言ったらどうですか?」


「若くてかわいかったら、オトコに困んないんじゃねーの」


「困ってなんかいません、恋愛はもういいんです」


「でた、お局宣言。


昨日もさんざんボヤいてたからな、たまってんだな」



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