キミに出会うまで
チラッと森さんを見ると、笑いをこらえていた。


ほんと、失礼なヤツ。



9時を過ぎると、月曜はいつも電話が鳴ってばかり。


ひとつひとつ対応しつつ、仕事をこなしていく。


夕方、部長と森さんと打ち合わせだから、業務しながら気づいた点をメモしていく。




発注書一覧を、担当者別に出力してほしい。


商品名を、もう少し大きく表示してほしい。


商品アイテムごとに、納期を設定したい。



商品部のみんなが日頃話していることも、付け加えていく。



在庫管理をやりやすくするために、在庫表を見直してほしい。


商品の登録画面を変更してほしい。




こんなとこかな。


気づくと、もう少しでお昼休みだった。


「いっけない、今日は電話当番だから、ちょっとお昼買ってきます」



近くのコンビニで、コーヒーとサンドイッチとチョコを買う。


チョコとコーヒーって、最強の組み合わせだと思うんだよね。




みんながお昼でいなくなって、静かなオフィス。


いるのは私だけのはずが、ガタンと物音がして振り向くと、森さんが歩いてきた。


「どうしました?


みんなお昼で、外食か休憩室にいますよ」


「おまえは?」


「私は、お昼休みの電話当番なので」


「ふーん」


「前から言おうと思っていたんですけど、私のこと『おまえ』って呼ぶの、やめてもらえますか?


私は『坂本』ですので」


「俺が介抱してあげたのを忘れたのかな・・・」


「それとこれとは関係ないですよね?」


「そうだ、メシおごってもらう約束だけどさ、今晩どう?


ちょうど打ち合わせもあるし」


「いいですけど、何が好きですか?」


「なんでもいいよ、おまえのセンスしだいだけどな」


「ですから、おまえって言うのやめてもらえます?」


「わかったよ、約束はできないけどな」


「ちょっと待ってください!」


そこで電話が鳴り、話は途切れてしまった。








< 32 / 215 >

この作品をシェア

pagetop