キミに出会うまで
それから、森さんとはまともに会話をしなくなった。


それまでは、システムの打ち合わせがあってもなくても、なにかしら話してたのに。


たとえそれが、くだらない言い合いだったとしても。



そんな会話がなくなって初めて、なにか物足りなさを感じた。


めんどくさい、疲れるって思ってたけど、言いたいことを言える関係は、楽しかったのかもしれないとまで考え始めた。




商品部とシステム部は、通路を隔ててすぐ隣だったから、明日香先輩やひとみちゃんも、森さんと私の関係が変わったことに気づいていた。



「ゆう、森さんと全然話してないけど、どうした?」


「優花先輩、なんか元気ない感じですよねー」


ランチの時に、よくそんな風につっこまれたけど、


「べつに、打ち合わせもないので、しゃべらないだけです」


と、ごまかした。



商品部は、月末月初が一番忙しい。


在庫管理や、請求書のチェックがあるからだ。


残業も必ずしなきゃならないくらい。



私が残業してると、森さんも残業していて、なんだか難しそうな顔してパソコンに向かってた。


私が20時頃に退社する時も、まだ残っていた。


「お疲れさまです、お先に失礼します」


と声をかけても、返事すらしてもらえなかった。



なんか私、避けられてる?


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