キミに出会うまで
「なにするんですか、返してください!」


「しょーがねーな、じゃあ口移しで返してやるよ」


「きたなーい、そんなのいらない!」


「これ、優花が作ったのか?」


「そうですけど、なにか文句でも?」


「いや、顔に似合わず美味いな、と思って」


「失礼だな、お金もらいますよ?」


「そういえばさ、優花は夏休みどっか行くのか?」


「行きませんよ、どこも」


「土屋さんや水野さんとは出かけないのか?」


「ふたりともパートナーがいますから、私はお邪魔虫になっちゃうんで。


って、なんなんですかさっきから、イヤミ?」


「いや、かわいそうだから、俺と遊びに行かないかと思って、誘ってやろうかと」


「いいです、一人は慣れてますから」


「へー、これを見てもそんな口がきけるのか?」



森さんがヒラヒラ見せたのは、北海道のパンフレットだった。

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