キミに出会うまで
「いいなぁ、北海道・・・って、誰が行くんですか?」


「俺と優花だけど?」


「はい?」


「だから、俺と優花で函館へ行って、俺んちに泊まれば、飛行機代だけですむだろ?」


「冗談も度を過ぎると、迷惑ですよ」


「夏の函館は夜景もいいし、食べ物もうまいのになー、ザンネンだなー」


「無理です!」


「なんで無理なんだよ、俺の両親にとって、俺たちは付き合ってるってことになってんだから」


「なんでまた、彼女のフリしないといけないんですか!」


「俺が夏休みに実家へ帰るって電話したら、『優花ちゃんも一緒にいらっしゃいよ~』って母さんがうるさくて」


「ご両親はとってもいい人ってわかってますけど、そんなずうずうしいことできません」


「なんなら、俺が飛行機代出してやってもいいけど?


優花、北海道行ったことないんだろ?」


「・・・ないですけど」


「安心しろよ、寝るのは客間で別だし、食事もうまいとこ連れていくし。


行くかどうか、考えといて」



北海道は、ずっと行きたかった場所のひとつだったし、美味しいものに目がない私にとって、贅沢すぎる話だった。



正直、ご両親とはとても気があったから、また会いたいと思っていたし。


でも、また彼女のフリをしてまで行っていいのか、3日間も一緒にいたらバレてしまうんじゃないか、不安の方が大きかった。


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