気になるパラドクス
でも、もう来てしまっているのだし、どんな場所でも、どんな格好でも黒埼さんは黒埼さんだ。

例え“萌えキュン”的に、心臓鷲掴みにされようと。

「クリスマスプレゼント」

顔が赤いのは自覚しているけど、澄ました顔を取り繕って、箱をコトリとテーブルに置く。
黒埼さんは何も言わずに手に取ってくれた。

「開けてもいいか?」

……うわー。ワクワクしてる。
目がもう、ワクワクして輝いてるよ。

「ど、どうぞ……」

がっかりされたらどうしよう。
可愛いもの好きなのは知ってるけど、男の人のプレゼントに可愛いものは選べなくて、単なる腕時計なんですけど~。

ガサガサしながらも、とても丁寧に包装を開ける黒埼さんをじっと見つめる。

彼は箱のロゴを見てから、片方の眉を上げ……それから箱を開けて、時計を手に取ると破顔した。

「なに。俺を束縛したい?」

「……え?」

「いやー。嬉しいな。そこまで思われてたら、期待に応えて束縛されるよ」

……超、深読みしてる。

そうね。私もクリスマスプレゼントを選ぶに当たって、プレゼントの意味を調べたりもした。
だから、女から男に贈る“腕時計”には“あなたの時間を私に頂戴”的な意味があるのは知っている。

それはとっても恥ずかしい意味合いだけど……。

喜んで時計をつけてる黒埼さんを見て、笑顔なら……それでもいいかなって思う。

「……で? 訂正するなら今だけど、いいのか?」

「うん。いいと思う。何だかいつのまにか黒埼さんに取り込まれちゃった」

「大丈夫だよ、俺は溺れたから」

……真面目な顔をして、何を言ってるんだ。

「じゃ、俺もプレゼント先に渡すか」

スーツのジャケットから出てきたのは、本当に小さなピンクの巾着袋。
手に落とされると、瞬きした。

パワーストーンを入れる巾着に似てるけど……。

逆さにしてみると、スルリと出てきたのはシルバーのチェーン。慌てて受け止めるとオープンハートがついていた。

「可愛い~。オープンハートだ」

「うん。あの会社。ピアスくらいなら大丈夫みたいだけど、美紅はピアスしてないし。腕時計してるのは野郎ばかりで、ブレスレッドしている人は見たことないし。それなら身に付けてくれるかと思って」

「やだなー。プレゼントならいつもつけるよ」
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