気になるパラドクス
可愛らしく揺れているハートを見つめて微笑む。

今までのプレゼントって、男の子っぽいゴツいシルバーアクセとか、超シンプルなチェーンネックレスとか、よく分からないポートレートだとか……。
あ。いや。黒埼さんとふたりでいるのに、昔の男のことなんかを思い出すのはよくないね。

「嬉しい。つけてもいい?」

「つけてあげようか?」

黒埼さんにニッコリされて、私も笑顔で固まった。

さ、さすがにそれは恥ずかしいかなぁ?

「よし。つけてあげよう」

手を出されて、無言でその手と黒埼さんを見比べる。

「は、恥ずかしいよ」

「恥ずかしいって言うより、美紅は照れるんだろ?」

そうだけど。

「いいからいいから。こういうのは付き合ってる特権だろ」

シャランと黒埼さんの手に、もらったネックレスを落とすと、とても嬉しそうに手を伸ばしてくる。
……そう言えば、かなり前に黒埼さんは“人目憚らずイチャつく”人だと自分で言っていたような気がした。

ドキドキしながらネックレスをつけてもらって、微かに触れる指先の熱に顔を赤らめる。

「うん。可愛い」

目を細めて笑うから、思わず視線を外してしまう。

船内アナウンスが流れ、船がゆっくりと動き出した。
動いていく夜景に溜め息をついて、鼓動が落ち着いてから黒埼さんを盗み見た。

きっと、いろいろと考えてくれた結果として、船上デートだったのかな?
それなら、言うのは文句じゃなくて……。

「ありがとう……」

どうにもふてぶてしい“ありがとう”になっちゃったけど、黒埼さんはゆったりと微笑んでくれた。

「いいよ。美紅の驚いた顔を見れたし」

爽やかな笑顔が一変、意地悪い笑顔になったけど、それはそれでいいか……。

そうしているうちに料理が運ばれてきて、お互いにお話しながら食べ始める。
< 115 / 133 >

この作品をシェア

pagetop