気になるパラドクス
「そういえば黒埼さん。香草で食べられるものもあるの?」

「どんなものも苦手。セロリと大葉もダメだし、青臭いものは全般的だな」

「パクチーとか、三つ葉もダメそうね」

見ると、綺麗に飾られた……なんの葉っぱかわからないものは、きちんとお皿のわきに寄せてある。

「時任さんも……俺は苦手かも?」

「え……?」

唐突に飛び出した時任さんの名前に、思わず黒埼さんを凝視した。

「……あいつが美紅に言い寄っているなら、俺ってライバルじゃないか。それなのに、あの男は普通に美紅が大変だって伝えに来た」

ブツブツ言いながら、視線を逸らされる。

なんだろう。何て答えればいいかな。
ちゃんと答えないと、黒埼さんは気にするのかな。

「時任さんには……私、ごめんなさいしたけど」

「何か言われたのか?」

一瞬だけ視線が交わって、そしてまた外される。

「言われないけど。ごめんなさいしたら、そういう真面目なところも好きだったって言われた」

黒埼さんは何とも言えない申し訳ないような顔をして、それから片手で待ったをかけてきた。

「ごめん。水を差すつもりはなかったんだ。変なことを言った」

「やー……なんか余計な事を言う黒埼さんにも慣れてきたかも。でも、困らないよ」

クスクス笑いながら言うと、首を傾げられる。

「困らないか?」

「過剰なのは嫌だけど。それって根っこは焼きもちでしょ?」

それならそれで、嬉しい……より、ありがたいのかな。
見た目からサバサバしてると思われていた付き合いは、とてもサラッとした付き合いにしかならなかったから。

「美紅がいいなら、俺は盛大に嫉妬するけど」

「……ほどほどにしてよ。盛大に嫉妬されても、どうすればいいのかわからないから」

そんなことを話ながら、届いたデザートに目を輝かせた。

チョコレートのケーキはくどくなりがちだけど、思っていたよりあっさりしていてリキュールも効いている。

「クリスマスケーキは子供向けにリキュールも少なめなのに、ここのはそんなじゃないのね」

「子供向けのプランなら、そういうケーキになるんじゃないのか?」

……そうだね。今は大人のクリスマスプランですね。
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