気になるパラドクス
慌てて弁明するほどひどいことになった気がしないでもないけど、その男の人の耳をつねっていた彼女が、彼の耳を持ったまま近付いてきた。
「あの彼女も、相当ひどいな」
ボソリとした呟きは、たぶん私にしか聞こえなかったろうけど、彼女は私たちの前に来るとペコリと頭を下げた。
「すみません。うちの人が失礼な事を言いまして。ほらっあなたも謝りなさい!」
「……この人も小さいとか、子供とか言ってたから同罪だろ」
「先に失礼な事を言ったのはあなたでしょう!」
彼女にキリキリ言われて、彼は小さく「すみませんでした」と頭を下げたので、私も慌てて頭を下げる。
「私も、見もせずに男の子扱いしてすみませんでした」
「い、いえ……」
彼は彼女に耳を離してもらうと、すぐにデッキから離れて行った。
それを彼女は溜め息混じりに見送って、私を見上げる。
「私は、背が高くてモデルさんみたいだって思いました」
そう言うと、彼を追って彼女も去っていった。
「……わぁ。モデルさんって、はじめて言われちゃったわー」
「あのふたりも、普段は小さいとか言われてんだろうな」
そう言われれば、ふたりとも私の顎ラインくらいの身長だったかも。
女の子はともかく、男の人であの身長なら……きっといつもプライド刺激されちゃっているんだろうな。
「小さい人もそれなりに大変だね」
「大きい人も、たまに頭ぶつけて大変だけどな」
それはよくわかる。古い家屋だと、部屋の入口が低いから頭ぶつけるんだよね。
そんなことを言い合いながら、船から見える景色をスパークリングワインを片手に楽しみ。途中降ってきた雪に感動していたら、黒埼さんに笑われた。
「子供かよ」
そう言われて膨れた頬を片手で潰される。そして変になった顔に、また笑われた。
きっと、黒埼さんの方がもっとひどいと思う。
「あの彼女も、相当ひどいな」
ボソリとした呟きは、たぶん私にしか聞こえなかったろうけど、彼女は私たちの前に来るとペコリと頭を下げた。
「すみません。うちの人が失礼な事を言いまして。ほらっあなたも謝りなさい!」
「……この人も小さいとか、子供とか言ってたから同罪だろ」
「先に失礼な事を言ったのはあなたでしょう!」
彼女にキリキリ言われて、彼は小さく「すみませんでした」と頭を下げたので、私も慌てて頭を下げる。
「私も、見もせずに男の子扱いしてすみませんでした」
「い、いえ……」
彼は彼女に耳を離してもらうと、すぐにデッキから離れて行った。
それを彼女は溜め息混じりに見送って、私を見上げる。
「私は、背が高くてモデルさんみたいだって思いました」
そう言うと、彼を追って彼女も去っていった。
「……わぁ。モデルさんって、はじめて言われちゃったわー」
「あのふたりも、普段は小さいとか言われてんだろうな」
そう言われれば、ふたりとも私の顎ラインくらいの身長だったかも。
女の子はともかく、男の人であの身長なら……きっといつもプライド刺激されちゃっているんだろうな。
「小さい人もそれなりに大変だね」
「大きい人も、たまに頭ぶつけて大変だけどな」
それはよくわかる。古い家屋だと、部屋の入口が低いから頭ぶつけるんだよね。
そんなことを言い合いながら、船から見える景色をスパークリングワインを片手に楽しみ。途中降ってきた雪に感動していたら、黒埼さんに笑われた。
「子供かよ」
そう言われて膨れた頬を片手で潰される。そして変になった顔に、また笑われた。
きっと、黒埼さんの方がもっとひどいと思う。