気になるパラドクス
***


なんだか背中がとても暖かい。

その事に気がついて、優しい微睡みの中からふわふわと覚醒する。

ものすごーく薔薇の匂いがする。薔薇の香りって、とても女性的な匂いだよね。

……目を開けるとシーツが白い。うちのシーツはピンクか、オフホワイト。

えーと。昨日は確か……。

そこまで考えて、パッと目が覚めた。

「おはよう。目が覚めたか?」

耳元で聞こえた声は、とても低くて少し色っぽい。そして、今まさに、背中から抱きしめられている。

「お、おはようございます……」

思った瞬間に以上に、カサカサでざらざらな声が出た。

もう、どうにかしてください。

丸くなって両手で顔を隠すと、背後からクスクス笑われた。

「なんで今さら敬語?」

なんでって言われたって、わからないよ。つい出ちゃったんだから。

とりあえず、突っ込まないで!

「……照れてんのか?」

背後で起き上がる気配がして、手のひらの隙間から睨むと、驚いたような顔が見えた。

「あー……真っ赤だな」

真っ赤でしょうよ、赤くもなるよ。
本当に本当の意味で“抱き潰”されるとは、思っても見なかったよ!

最初はとても荒っぽく奪われて、次はゆっくりと愛でられて、次はお風呂で優しく触れられて、次は……もう、その辺りから、正直いって記憶から抜け落ちている。

とにかく、解放されたのは、カーテンの隙間から朝陽が差し込んできたあたりだ。

それだけはぼんやり見覚えがある。

「……無理って言ったのに」

「いや、あの時、そんなこと言われても……煽られるだけだよな」

「そんなつもりは、なかったんだってば!」

だいたい男の人を煽れるような、気の効いた発言できるわけないでしょ!
私が無理って言ったら、本当に無理なのー!

不貞腐れていたら頭をなでなでされて、ますます顔を赤らめた。

「とりあえず、なんか飲んだ方が良さそうだな……ミルクティーとかでいいか?」

「あるの?」

「朝食をルームサービスで頼んだ」

あ、そう。
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