気になるパラドクス
温もりが離れて、シュルッと衣擦れの音がしたかと思うと、黒埼さんは上に何も着ずに、ジーンズを履いている。

……あれ。そんなの持ってきていたの?

「起きれるか?」

「起きれる……と、思う」

そう思う。とりあえずシーツを身体に巻き付けて、起き上がろうと努力はした……。

でも、腰が痛い~。もうヤダ。腰が痛いってなに? 私の年齢的なもの?
それとも黒埼さんのせい?
それってどっちも恥ずかしくて嫌ぁ!

泣きそうになってると、黒埼さんが笑いながら両手を広げる。

「そういう時は、素直に“だっこして”って言ってくれたら嬉しいんだけどな。俺のせいだろうし」

言えるか!

……でも、黒埼さんは同じ体勢で待ってるし。今、無理をすると転がり落ちて、いらない醜態をさらしそうな気するし。

「……だっこ……」

ポツリと呟くと、満面の笑みが返ってきた。

「オーケー。じゃ、シーツちゃんと掴んでな」

……黒埼さんは“お姫様だっこ”がマイブームなのかな。そうして運ばれて、ソファに座らされる。

「後でゆっくり風呂入るか?」

「え……えーと……」

昨日……もしくは今日、お風呂でイチャイチャした記憶は、けっこう鮮明に覚えているんですけど。

黙り込んだら、苦笑しながら片手を振られた。

「襲わない。約束するから」

「……じゃあ入る。入らないと帰れないかも」

腰以外にも、実はあちこち痛い。
ああもう、本当に恥ずかしい。
そう思いながら、上半身裸の黒埼さんを見上げた。

……陽の光に照らされた身体は、パッと見は細身にも見えるけど、実は筋肉質だ。いわゆる細マッチョ?

ムッキムキと言うわけではないけど、無駄が無さそうな身体をしてる。

そんな彼は、眉間にシワを寄せて、難しい顔をしながら、真剣に紅茶を淹れていた。

「観察されてる気分なんだけど」

「観察していましたとも」

だって昨日は、すぐにワケわかんなくなっちゃって、あんまり印象がさ……?
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