気になるパラドクス
最初は少しぎこちなかったけれど、食べながらポツリポツリと会話をしているうちに慣れてくる。
黒埼さんはひとつ年上の36歳。フロッグすてっぷのチーフデザイナーらしい。
このクマさんが、あの可愛らしいカエルさんや子羊さんをデザインしたと聞いてビックリしたけれど、見た目とギャップがあるのは私も一緒だ。
「もの作りはたのしいですか?」
「一から作るのは楽しいね。可愛いものを眺めているのも楽しいし」
ペットボトルからお茶を飲みながら、黒埼さんはそう言って私を見る。
「それじゃ……私を見ても楽しくないでしょう」
「結構楽しいよ。村居さん可愛いし」
無表情に黒埼さんを眺める。
間違っても、無糖紅茶片手に焼き鳥をくわえている女に言う台詞じゃないと思うな~。
「私を可愛いと言う人はいませんよ」
「そうか? なら、質問の答えは貰えたみたいかな」
飄々と呟いて、豚串を食べている黒埼さんをまじまじと眺めた。
……私、何か質問された?
「今、男いないだろ。なら、俺は誰かから村居さんを奪う手間が省ける」
淡々とした言葉に……呆れるんですけど。
「……あの、その前に、ですね? 磯村くんからハッキリと脈なしって言われてませんか?」
「言われてる。けど、それで諦める雄は雄じゃないだろ」
男じゃなくて雄なんだ? じゃ、私は女じゃなくて雌?
ぼんやり考えていたら、黒埼さんは微かに唇の端を上げ、並べられている子羊さんを指差す。
「こーゆーの好きでしょ?」
「……まあ。嫌う人はあまりいない、と?」
「当たり障りない答えだなー」
「私には似合いませんから」
呟いて焼き鳥を食べると、彼は何を思ったのか立ち上がり、フロアの電気を全部つけ始めた。
「黒埼さん?」
「似合う似合わないは、他人が決めることじゃないと思うけどね」
そしてゆっくり近づいて来ると、座ったままの私を見下ろして、黒埼さんは首を傾げる。
「村居さんが自分で他人の鋳型にはまりたがるなら、俺がはめてもいいな?」
「はい?」
黒埼さんはひとつ年上の36歳。フロッグすてっぷのチーフデザイナーらしい。
このクマさんが、あの可愛らしいカエルさんや子羊さんをデザインしたと聞いてビックリしたけれど、見た目とギャップがあるのは私も一緒だ。
「もの作りはたのしいですか?」
「一から作るのは楽しいね。可愛いものを眺めているのも楽しいし」
ペットボトルからお茶を飲みながら、黒埼さんはそう言って私を見る。
「それじゃ……私を見ても楽しくないでしょう」
「結構楽しいよ。村居さん可愛いし」
無表情に黒埼さんを眺める。
間違っても、無糖紅茶片手に焼き鳥をくわえている女に言う台詞じゃないと思うな~。
「私を可愛いと言う人はいませんよ」
「そうか? なら、質問の答えは貰えたみたいかな」
飄々と呟いて、豚串を食べている黒埼さんをまじまじと眺めた。
……私、何か質問された?
「今、男いないだろ。なら、俺は誰かから村居さんを奪う手間が省ける」
淡々とした言葉に……呆れるんですけど。
「……あの、その前に、ですね? 磯村くんからハッキリと脈なしって言われてませんか?」
「言われてる。けど、それで諦める雄は雄じゃないだろ」
男じゃなくて雄なんだ? じゃ、私は女じゃなくて雌?
ぼんやり考えていたら、黒埼さんは微かに唇の端を上げ、並べられている子羊さんを指差す。
「こーゆーの好きでしょ?」
「……まあ。嫌う人はあまりいない、と?」
「当たり障りない答えだなー」
「私には似合いませんから」
呟いて焼き鳥を食べると、彼は何を思ったのか立ち上がり、フロアの電気を全部つけ始めた。
「黒埼さん?」
「似合う似合わないは、他人が決めることじゃないと思うけどね」
そしてゆっくり近づいて来ると、座ったままの私を見下ろして、黒埼さんは首を傾げる。
「村居さんが自分で他人の鋳型にはまりたがるなら、俺がはめてもいいな?」
「はい?」