気になるパラドクス
3
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いつも通り、とは言いがたい月曜日。
御用納めの今日は、ちょっとした補足の通常業務と、部署内の大掃除で一日が終わる。
すでに年末に入っている会社もあるなか、今日はほぼ大掃除の為の出勤と言っても間違いない。
「打ち込み終了~。ファイルに書類が残ってたなんて事ないように、洒落にならないからねー?」
べっこう飴を舐めながら、パラパラ書類を確認していたら、困ったことに目の前に差し出された書類。
瞬きして、差し出してきた磯村くんを見上げた。
「あれ。珍しい」
「顧客から捩じ込まれました。後は課長の確認印が欲しいんですが見つかりませんし、後10分で物流センターの方に行かないといけませんし。お願いしてもいいですか?」
「あらら。お疲れ様。直接配送するつもり?」
書類をさっと確認して、事務の承認印を押印する。
「その方が手間が省けますからね。それと、お祝いを言いに?」
磯村くんが、人好きのする笑顔を見せて、ちょいちょいと私の左手を指差す。
この子はまったく……。
「嫁に目敏いって言われない?」
恨めしい顔で磯村くんを見るけど、爽やかな笑顔は崩れない。
「うちの奥さんは秘密主義なんでちょうどいいんですよ。とにかく、おめでとうございます。いつですか?」
「今日の夜に黒埼さんのうちに正式にご挨拶して、年末に実家に帰る予定です」
「早業ですねー」
私もそう思うけど、人の話を聞いてから聞き流すようなクマさんを、どうして止められるのよ。
飴をバリバリかじると、目の前を整理整頓中の部下たちが、爛々とした目をして私を見ていたから少しひいた。
「……な、なによ」
「私たちの女王様が、陥落しちゃったんですか」
……女王。
私、いつの間にそんなけったいなものに祭り上げられていたの?
え。私ってそんな偉そう?
パンがなければお菓子を食べればいいとは……ああ、でもあれは王妃か。
「いいじゃないの。私だって幸せになる資格はあるのよ」
「うんうん。幸せになろうな」
遥か頭上から聞こえてきた低い声に、目を丸くして固まった。
案の定、部下たちは笑いながら私の背後、頭上高くを見上げている。
いつも通り、とは言いがたい月曜日。
御用納めの今日は、ちょっとした補足の通常業務と、部署内の大掃除で一日が終わる。
すでに年末に入っている会社もあるなか、今日はほぼ大掃除の為の出勤と言っても間違いない。
「打ち込み終了~。ファイルに書類が残ってたなんて事ないように、洒落にならないからねー?」
べっこう飴を舐めながら、パラパラ書類を確認していたら、困ったことに目の前に差し出された書類。
瞬きして、差し出してきた磯村くんを見上げた。
「あれ。珍しい」
「顧客から捩じ込まれました。後は課長の確認印が欲しいんですが見つかりませんし、後10分で物流センターの方に行かないといけませんし。お願いしてもいいですか?」
「あらら。お疲れ様。直接配送するつもり?」
書類をさっと確認して、事務の承認印を押印する。
「その方が手間が省けますからね。それと、お祝いを言いに?」
磯村くんが、人好きのする笑顔を見せて、ちょいちょいと私の左手を指差す。
この子はまったく……。
「嫁に目敏いって言われない?」
恨めしい顔で磯村くんを見るけど、爽やかな笑顔は崩れない。
「うちの奥さんは秘密主義なんでちょうどいいんですよ。とにかく、おめでとうございます。いつですか?」
「今日の夜に黒埼さんのうちに正式にご挨拶して、年末に実家に帰る予定です」
「早業ですねー」
私もそう思うけど、人の話を聞いてから聞き流すようなクマさんを、どうして止められるのよ。
飴をバリバリかじると、目の前を整理整頓中の部下たちが、爛々とした目をして私を見ていたから少しひいた。
「……な、なによ」
「私たちの女王様が、陥落しちゃったんですか」
……女王。
私、いつの間にそんなけったいなものに祭り上げられていたの?
え。私ってそんな偉そう?
パンがなければお菓子を食べればいいとは……ああ、でもあれは王妃か。
「いいじゃないの。私だって幸せになる資格はあるのよ」
「うんうん。幸せになろうな」
遥か頭上から聞こえてきた低い声に、目を丸くして固まった。
案の定、部下たちは笑いながら私の背後、頭上高くを見上げている。