気になるパラドクス
「だいたい引かれるんだよなー。こんな大男が、フロップ描いてたりミリー描いてたりすると」
フロップとメリー?
キョトンとすると、黒埼さんはポケットから鍵を取り出して、フロッグすてっぷのカエルさんと子羊さんのキーホルダーを見せてくれる。
「カエルがフロップ。羊がミリー」
「名前あったんですか?」
「親父がつけた。もじったのがまんま過ぎててセンスがねぇ」
言いながら鍵をしまって、それから見透かすように目を細めながら笑った。
「だから、俺のなり見ていながら、あんたみたいな反応も珍しい」
「私だって最初は驚きましたよ。フロッグすてっぷのデザイナーが黒埼さんだと知った時は。私は女の人がデザイナーだと思ってましたもん」
「まぁな? だから、俺は滅多に人前に出ない。どっかの会社で“夢が壊れました”とか言われたし」
……それは相当だな。
でも、確かにこんな大男が、普通にフロップとミリーを持っているだけで“夢が壊れそう”だもんね。
「黒埼さん見た目がいいもの。見た目がいい男には、カッコいいものを持っていてもらいたいって女なら思うわね。それなのにキーホルダーがフロップとミリーだったら、さぞかし興ざめかもしれないな」
淡々と感想を呟くと、黒埼さんは微かに困ったような顔をする。
「お、おう……」
「だけどね、黒埼さん。皆が可愛いって盛り上がっている時に、私も可愛いなって思って『可愛い』って言うと『村居さん無理しなくていいよ』って言われ続けていた女なの」
グラスを手に取りビールをひと口飲むと、ビールの泡は消えていて、苦味だけが口のに広がった。
「つり目の大女にも『可愛い』は似合わないのよ。そういったモノは小さくてれっきとした“女の子”に似合うの。だから、私が例え可愛いもの好きでも、絶対に認めない」
「いや。そう言ってる段階で認めてるだろう?」
言われて顔を赤らめた。
フロップとメリー?
キョトンとすると、黒埼さんはポケットから鍵を取り出して、フロッグすてっぷのカエルさんと子羊さんのキーホルダーを見せてくれる。
「カエルがフロップ。羊がミリー」
「名前あったんですか?」
「親父がつけた。もじったのがまんま過ぎててセンスがねぇ」
言いながら鍵をしまって、それから見透かすように目を細めながら笑った。
「だから、俺のなり見ていながら、あんたみたいな反応も珍しい」
「私だって最初は驚きましたよ。フロッグすてっぷのデザイナーが黒埼さんだと知った時は。私は女の人がデザイナーだと思ってましたもん」
「まぁな? だから、俺は滅多に人前に出ない。どっかの会社で“夢が壊れました”とか言われたし」
……それは相当だな。
でも、確かにこんな大男が、普通にフロップとミリーを持っているだけで“夢が壊れそう”だもんね。
「黒埼さん見た目がいいもの。見た目がいい男には、カッコいいものを持っていてもらいたいって女なら思うわね。それなのにキーホルダーがフロップとミリーだったら、さぞかし興ざめかもしれないな」
淡々と感想を呟くと、黒埼さんは微かに困ったような顔をする。
「お、おう……」
「だけどね、黒埼さん。皆が可愛いって盛り上がっている時に、私も可愛いなって思って『可愛い』って言うと『村居さん無理しなくていいよ』って言われ続けていた女なの」
グラスを手に取りビールをひと口飲むと、ビールの泡は消えていて、苦味だけが口のに広がった。
「つり目の大女にも『可愛い』は似合わないのよ。そういったモノは小さくてれっきとした“女の子”に似合うの。だから、私が例え可愛いもの好きでも、絶対に認めない」
「いや。そう言ってる段階で認めてるだろう?」
言われて顔を赤らめた。