気になるパラドクス
4
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「それで? 僕は村居さんを黒埼さんの“恋人”だと思って邪魔しなければいいですか?」
どこかあっけらかんと書類を差し出す磯村くんに、ミルクキャンディをかじりながら冷たい視線を返す。
「……磯村くんまでからかうの?」
「からかうのは嫁だけにしてます。でも面白そうだとは思います」
思わないで下さい。
飲み会の次の日には、黒埼さんに“お持ちかえり”されたと言う噂が蔓延っていて、他部署の人からチラチラ見られたし。後輩からは探られるし、ちょっとさんざんだから。
たまにしか現れない“フロッグすてっぷの巨人”は、社内でも目立つ存在だったらしい。
まぁ、あれだけラフな格好なら、それだけでも目立つとは思うけどさ。
「そう言えば磯村くん。業績トップおめでとう」
今月の売上報告を見ながら淡々と呟くと、磯村くんが一瞬固まって、それからこっそりと握りこぶしを握るのが見えた。
うんうん。素直じゃないけど、後輩くんのこういうところは可愛いよね。
「本当ですか?」
「嘘ついてどうするのよ。あの時任さん抑えてのトップなら、誇りに思っていいんじゃない?」
「……嫁をデートに誘ってきます」
くるりと反転して、スタスタと冷静に部署を出ていく磯村くんを、生暖かい視線で見送った。
……あの子は、事ある毎にノロケてくれちゃうよね。
考えていたら、なにかを思い出したように、磯村くんが戻ってきた。
「つい忘れていました」
シリアスな顔に、ちょっと引く。
「……何ですか?」
「今日の15時から、黒埼さん来ますから、それだけは伝えておこうかと思っていたんです」
……それはありがとう。
ポカンとする私に、磯村くんは真面目な顔をしたまま頷いて、また部署を出ていった。
「それで? 僕は村居さんを黒埼さんの“恋人”だと思って邪魔しなければいいですか?」
どこかあっけらかんと書類を差し出す磯村くんに、ミルクキャンディをかじりながら冷たい視線を返す。
「……磯村くんまでからかうの?」
「からかうのは嫁だけにしてます。でも面白そうだとは思います」
思わないで下さい。
飲み会の次の日には、黒埼さんに“お持ちかえり”されたと言う噂が蔓延っていて、他部署の人からチラチラ見られたし。後輩からは探られるし、ちょっとさんざんだから。
たまにしか現れない“フロッグすてっぷの巨人”は、社内でも目立つ存在だったらしい。
まぁ、あれだけラフな格好なら、それだけでも目立つとは思うけどさ。
「そう言えば磯村くん。業績トップおめでとう」
今月の売上報告を見ながら淡々と呟くと、磯村くんが一瞬固まって、それからこっそりと握りこぶしを握るのが見えた。
うんうん。素直じゃないけど、後輩くんのこういうところは可愛いよね。
「本当ですか?」
「嘘ついてどうするのよ。あの時任さん抑えてのトップなら、誇りに思っていいんじゃない?」
「……嫁をデートに誘ってきます」
くるりと反転して、スタスタと冷静に部署を出ていく磯村くんを、生暖かい視線で見送った。
……あの子は、事ある毎にノロケてくれちゃうよね。
考えていたら、なにかを思い出したように、磯村くんが戻ってきた。
「つい忘れていました」
シリアスな顔に、ちょっと引く。
「……何ですか?」
「今日の15時から、黒埼さん来ますから、それだけは伝えておこうかと思っていたんです」
……それはありがとう。
ポカンとする私に、磯村くんは真面目な顔をしたまま頷いて、また部署を出ていった。