気になるパラドクス
考えてみれば、磯村くんはいい子だよね。
新人の時から、気さくに話しかけてくる人は少なかったけど、磯村くんは物怖じせずに話しかけてきてくれていたな。
初対面の時に挨拶をしたら、皆がどことなく遠慮する中『先輩って身長高いんですね』って、ニッコリ微笑みながら感想を言ってきたのにはビックリしたけど。
たまに歯に衣着せないし、仕事中は遠慮容赦しないし、嫌う子もいるけど、好かれているのも確かだし。
結構、些細な気遣いを忘れないのは……彼の習性なんだろうな。
「ところで……15時から、フロッグすてっぷとのミーティングなんて入っていた?」
ミーティングの予定を聞いてみると、部下のひとりが顔を上げる。
「……フロッグすてっぷと、と言うことであれば、今回は営業部絡みません。企画室とフロッグすてっぷでのミーティングなので、うちの予定には入ってません」
……何を聞かれているのか、瞬時に判断する……と言うか、聞き耳たてている後輩が怖い。
ちょっとだけ顔をしかめると、その子は愛想笑いをしながら髪を指で絡めた。
「……私、黒埼さんにあまりお会いしたくないですから調べてるんです。あの人怖いし」
言われて眉を上げる。
……ああ、そっか。この子、初日ミーティングの時に、八つ当たりされて帰って来た子か。
「私もあまりお会いしたくないなー。黒埼さん。ぐいぐいくるんだもん」
「主任、黒埼さんに気に入られちゃってるみたいですよねー。飲み会に行った子から聞きました」
もう、苦笑いしか浮かばないわー。
「顔はいいんですけどね。でも、私はちょっと引いちゃうかも」
難しい顔をするその子を、何気なく眺める。
黒埼さん、彼女にも引かれちゃうような事をしたの?
「だって、あのイケメンのバックから、キャラクターものの色鉛筆とかが出てくるんですよ? 男の人の持ち物じゃないでしょ」
抗議するような彼女に納得した。
つまりはイメージの問題ですね。
「黒埼さんはフロッグすてっぷのデザイナーなんだから、それもアリだと私は思うけど」
「でも、黒埼さんは男の人じゃないですか。いくら身長高くてイケメンでも、私は遠慮しちゃう~」
……君の言動こそ遠慮しちゃえ。
まぁ、いいか。この子はフロッグすてっぷ柄みの件からは外した方が良さそうだ。
この言動……は、なかったのかもしれないけど、この表情から察するに、態度でも引いたんだろうな。
それに気づいたら、ちょっとイラッとしそうだわー。
新人の時から、気さくに話しかけてくる人は少なかったけど、磯村くんは物怖じせずに話しかけてきてくれていたな。
初対面の時に挨拶をしたら、皆がどことなく遠慮する中『先輩って身長高いんですね』って、ニッコリ微笑みながら感想を言ってきたのにはビックリしたけど。
たまに歯に衣着せないし、仕事中は遠慮容赦しないし、嫌う子もいるけど、好かれているのも確かだし。
結構、些細な気遣いを忘れないのは……彼の習性なんだろうな。
「ところで……15時から、フロッグすてっぷとのミーティングなんて入っていた?」
ミーティングの予定を聞いてみると、部下のひとりが顔を上げる。
「……フロッグすてっぷと、と言うことであれば、今回は営業部絡みません。企画室とフロッグすてっぷでのミーティングなので、うちの予定には入ってません」
……何を聞かれているのか、瞬時に判断する……と言うか、聞き耳たてている後輩が怖い。
ちょっとだけ顔をしかめると、その子は愛想笑いをしながら髪を指で絡めた。
「……私、黒埼さんにあまりお会いしたくないですから調べてるんです。あの人怖いし」
言われて眉を上げる。
……ああ、そっか。この子、初日ミーティングの時に、八つ当たりされて帰って来た子か。
「私もあまりお会いしたくないなー。黒埼さん。ぐいぐいくるんだもん」
「主任、黒埼さんに気に入られちゃってるみたいですよねー。飲み会に行った子から聞きました」
もう、苦笑いしか浮かばないわー。
「顔はいいんですけどね。でも、私はちょっと引いちゃうかも」
難しい顔をするその子を、何気なく眺める。
黒埼さん、彼女にも引かれちゃうような事をしたの?
「だって、あのイケメンのバックから、キャラクターものの色鉛筆とかが出てくるんですよ? 男の人の持ち物じゃないでしょ」
抗議するような彼女に納得した。
つまりはイメージの問題ですね。
「黒埼さんはフロッグすてっぷのデザイナーなんだから、それもアリだと私は思うけど」
「でも、黒埼さんは男の人じゃないですか。いくら身長高くてイケメンでも、私は遠慮しちゃう~」
……君の言動こそ遠慮しちゃえ。
まぁ、いいか。この子はフロッグすてっぷ柄みの件からは外した方が良さそうだ。
この言動……は、なかったのかもしれないけど、この表情から察するに、態度でも引いたんだろうな。
それに気づいたら、ちょっとイラッとしそうだわー。